◆ ◆ ◆
それからは小動物に懐かれた気分だった。
会えば龍生、龍生ってそばに寄ってきて、会いたければ、俺の働いているバイト先まで一人で来た。
今日も放課後にファッションストリートにあるカフェでバイトしていると、千早が客としてやってきた。
「危ねぇから一人で来んじゃねぇって言ってんだろ?」
ここの通りは車が通らないといっても若い層を中心に人が多い。
ほぼ見えていない千早にとって、ここまで来る道は危険すぎる。
「だって、龍生バイト忙しいから、一緒に居られるのここしかないんだもん」
角の席に座って、千早が唇を尖らせながら言った。
この表情をされて俺がイライラしないのはこいつくらいだろう。
「呼んだら、迎え行くつってんだろ? 口ついてんぞ」
ドリンクを置きがてら、こっそり口をペーパーで拭いてやる。
「こんなに世話焼かせて、お前、俺がいないとなにも出来なくなったらどうすんだよ?」
そんなことを自分で口にしておきながら、本当は千早の答えなんざ分かってる。
どうせ、他のやつ探すだろ。
この顔なら面倒見たがるやつなんて余るほどいる。
そう思っていた。
「いいんだもん、僕の王子様は龍生だけだもん」
「おまっ、そういうこと……」
――よく普通に言えるよな……。
嬉しそうな顔で言われて戸惑った。
「それで龍生、バイト何時に終わるの? 今日、金曜日だから一緒に帰ろうよ。うち泊まろ?」
「は? そんな急に行ったら迷惑だろ?」
また突拍子もないことを言いやがって、と思ったら
「一週間前から言ってある」
その顔は自信満々な表情だった。
「いっしゅ……俺が断ったら、どうするつもりだったんだよ?」
「龍生はそんなことしないもん。で、何時なの?」
最初は呆れてたが、千早にまるで俺が絶対に断らないみたいな言い方をされて、思わず、笑いそうになる。
「……七時だよ」
降参して、気付いたらそう答えていた。
それからは小動物に懐かれた気分だった。
会えば龍生、龍生ってそばに寄ってきて、会いたければ、俺の働いているバイト先まで一人で来た。
今日も放課後にファッションストリートにあるカフェでバイトしていると、千早が客としてやってきた。
「危ねぇから一人で来んじゃねぇって言ってんだろ?」
ここの通りは車が通らないといっても若い層を中心に人が多い。
ほぼ見えていない千早にとって、ここまで来る道は危険すぎる。
「だって、龍生バイト忙しいから、一緒に居られるのここしかないんだもん」
角の席に座って、千早が唇を尖らせながら言った。
この表情をされて俺がイライラしないのはこいつくらいだろう。
「呼んだら、迎え行くつってんだろ? 口ついてんぞ」
ドリンクを置きがてら、こっそり口をペーパーで拭いてやる。
「こんなに世話焼かせて、お前、俺がいないとなにも出来なくなったらどうすんだよ?」
そんなことを自分で口にしておきながら、本当は千早の答えなんざ分かってる。
どうせ、他のやつ探すだろ。
この顔なら面倒見たがるやつなんて余るほどいる。
そう思っていた。
「いいんだもん、僕の王子様は龍生だけだもん」
「おまっ、そういうこと……」
――よく普通に言えるよな……。
嬉しそうな顔で言われて戸惑った。
「それで龍生、バイト何時に終わるの? 今日、金曜日だから一緒に帰ろうよ。うち泊まろ?」
「は? そんな急に行ったら迷惑だろ?」
また突拍子もないことを言いやがって、と思ったら
「一週間前から言ってある」
その顔は自信満々な表情だった。
「いっしゅ……俺が断ったら、どうするつもりだったんだよ?」
「龍生はそんなことしないもん。で、何時なの?」
最初は呆れてたが、千早にまるで俺が絶対に断らないみたいな言い方をされて、思わず、笑いそうになる。
「……七時だよ」
降参して、気付いたらそう答えていた。