三日目:午前八時二分
三日目の朝、朝食会場で目にしたDグループのメンバーは皆一様に寝不足気味にまなこを擦っていた。昨日の夜、今日の発表に備えて夜更かしをして頭を整理していたのだと分かる。善樹は割とたっぷり眠ることができたので、昨夜に比べるとかなり頭はすっきりしていた。
「おはよう」
美都に挨拶をされて、善樹も「おはよう」と返す。
「昨日はありがとう。おかげで最後まで頑張れそう」
「それは良かった。ラスト一日、一緒に頑張ろう」
美都が笑って頷く。インターンが始まって美都と会ったのは一年数ヶ月ぶりだったけれど、前みたいに普通に会話ができるようになって良かったと思う。
朝から豪勢な食事を終えると、午前九時を回っていた。発表は十時から。今からは休憩と、発表前の心の準備の時間だ。皆それぞれの部屋で自分の意見をまとめているだろう。善樹も、昨日まで使っていたパンフレットのメモ欄を眺めながら、発表の際の説明の順序などを頭の中で組み立てていた。
「さすが、真面目くんは偉いね」
時間ギリギリまでパンフレットと睨めっこをしている善樹に、どこからともなく降ってきた風磨の声。善樹はその声を無視して、鏡の前に立ち、顔にバシャバシャと水をかけた。今は風磨の戯言を聞いている余裕はない。どうせ風磨は発表だって理由をつけてサボるつもりだろう。
タオルで顔を拭くと、自分の顔が思ったよりも険しく、目の下に皺が寄っていた。ゴシゴシと目を擦って、なんとか表情を明るくしようと努める。すると今度は、逆にニヤニヤと怪しい笑顔が浮かんでしまい、善樹はため息をついた。
「まあ、肩の力を抜けって。俺みたいに」
鏡の中の風磨の顔を見ると、ひひひ、と乾いた笑みをこぼしている。
本当に、こいつみたいに何も考えずにのんびりと生きたいところだ。
そう思ったけれど、風磨は風磨なりに善樹の気が紛れるようにわざと茶化しているのかもしれないと思い至り、善樹は「そうだな」と適当に頷いた。
洗面所から出て時計を見ると、時刻は九時五十分を指していた。
「さあ、そろそろ行こうか」
誰にともなく呟く。風磨は「俺、トイレ行ってからにするわ」と予想通りの反応を見せた。そんな風磨を置いて、善樹は一人、ディスカッション部屋へと向かった。
三日目の朝、朝食会場で目にしたDグループのメンバーは皆一様に寝不足気味にまなこを擦っていた。昨日の夜、今日の発表に備えて夜更かしをして頭を整理していたのだと分かる。善樹は割とたっぷり眠ることができたので、昨夜に比べるとかなり頭はすっきりしていた。
「おはよう」
美都に挨拶をされて、善樹も「おはよう」と返す。
「昨日はありがとう。おかげで最後まで頑張れそう」
「それは良かった。ラスト一日、一緒に頑張ろう」
美都が笑って頷く。インターンが始まって美都と会ったのは一年数ヶ月ぶりだったけれど、前みたいに普通に会話ができるようになって良かったと思う。
朝から豪勢な食事を終えると、午前九時を回っていた。発表は十時から。今からは休憩と、発表前の心の準備の時間だ。皆それぞれの部屋で自分の意見をまとめているだろう。善樹も、昨日まで使っていたパンフレットのメモ欄を眺めながら、発表の際の説明の順序などを頭の中で組み立てていた。
「さすが、真面目くんは偉いね」
時間ギリギリまでパンフレットと睨めっこをしている善樹に、どこからともなく降ってきた風磨の声。善樹はその声を無視して、鏡の前に立ち、顔にバシャバシャと水をかけた。今は風磨の戯言を聞いている余裕はない。どうせ風磨は発表だって理由をつけてサボるつもりだろう。
タオルで顔を拭くと、自分の顔が思ったよりも険しく、目の下に皺が寄っていた。ゴシゴシと目を擦って、なんとか表情を明るくしようと努める。すると今度は、逆にニヤニヤと怪しい笑顔が浮かんでしまい、善樹はため息をついた。
「まあ、肩の力を抜けって。俺みたいに」
鏡の中の風磨の顔を見ると、ひひひ、と乾いた笑みをこぼしている。
本当に、こいつみたいに何も考えずにのんびりと生きたいところだ。
そう思ったけれど、風磨は風磨なりに善樹の気が紛れるようにわざと茶化しているのかもしれないと思い至り、善樹は「そうだな」と適当に頷いた。
洗面所から出て時計を見ると、時刻は九時五十分を指していた。
「さあ、そろそろ行こうか」
誰にともなく呟く。風磨は「俺、トイレ行ってからにするわ」と予想通りの反応を見せた。そんな風磨を置いて、善樹は一人、ディスカッション部屋へと向かった。