「そんなに仲良しの友達がいたなんてびっくり。あ、もしかして男の子? 彼氏?」
「違うよ! 彼氏じゃないって」
まさかそういうふうに取られると思っていなかった僕は咄嗟に取り繕う。
「ふうん。でも男の子、のところは否定しないんだね」
「いや、それは……」
同性だと嘘をつけばいいのに、この時の僕はなぜか正直な反応をしてしまっていた。
「そっかそっかあ。男の子ね。それにしても毎日手紙でやり取りか。時代に逆行するその感じ、嫌いじゃないよ」
「もう、瑛奈ったら。美雨のこといじめすぎだよ」
和湖がフォローしてくれるものの、一緒になって楽しんでいたのは知ってるぞ。
「で、手紙が途絶えてからどれくらい経つの?」
「十日くらいかな」
「十日? それぐらいだったら普通に忙しいだけなんじゃない?」
「そう……だよね」
瑛奈の言う通り、本当に手紙のやり取りならば十日くらい返事が来なくても、これほど思い悩むことはない。入れ替わりという特殊な状況下だからこそ、美雨のメンタルが心配なのだ。
「うん。心配することないよ。もし心配ならもう一度こっちから送ってみるのもありだと思う」
「もうちょっと待ってみて、それでも来なかったらそうしようかな」
視界の端に映る窓の外の雪が、先ほどよりも一層激しく吹雪いている。瑛奈の言い分は最もで、これ以上、彼女たちに余計な心配はかけられない。
「そういえばさ、話は変わるんだけど、この学校って修学旅行いつだっけ」
美雨のノートの話から話題を変えようと、僕は最近何かと僕の方の学校で話題になっている修学旅行の話を振った。とはいえ、僕も修学旅行の話は美雨が持って返って来た手紙や、江川くんとのメッセージのやり取りでしか聞いていないけれど。確か、北海道の、それも美瑛や富良野に行くらしい。今僕が入れ替わり先で生活しているところに行くなんて、すごい偶然だ。
「修学旅行? それなら二年生の秋って聞いたような」
「沖縄でしょ。北海道から沖縄なんて、ありがちすぎるよね」
「沖縄なんだ〜知らなかった」
「えー美雨、修学旅行に興味なさすぎない?」
「はは、そうかも……」
実際は興味がないというより、こちらの世界で美雨として修学旅行に行けるかどうか、あやふやだからついていけないだけだ。
「まだ先だけど、楽しみだね」
和湖がパチンと手を叩いて嬉しそうに微笑んだ。僕は美雨として行けるかどうかは分からないけれど、もし行けなくても美雨が友達と沖縄旅行を楽しむ姿を想像して、甘い気持ちが弾けた。
「あれ、美雨ってばやっぱり楽しみなの?」
「素直じゃないねえ」
顔にニヤケが出てしまっていたのか、いつも通り二人が僕を揶揄う。
この優しく穏やかな時間はいつまで続くのだろうか。
美雨からのメッセージが途絶えた今、期待以上に膨らむ不安が、どうしても頭の端の方に居座ってどいてくれなかった。
「違うよ! 彼氏じゃないって」
まさかそういうふうに取られると思っていなかった僕は咄嗟に取り繕う。
「ふうん。でも男の子、のところは否定しないんだね」
「いや、それは……」
同性だと嘘をつけばいいのに、この時の僕はなぜか正直な反応をしてしまっていた。
「そっかそっかあ。男の子ね。それにしても毎日手紙でやり取りか。時代に逆行するその感じ、嫌いじゃないよ」
「もう、瑛奈ったら。美雨のこといじめすぎだよ」
和湖がフォローしてくれるものの、一緒になって楽しんでいたのは知ってるぞ。
「で、手紙が途絶えてからどれくらい経つの?」
「十日くらいかな」
「十日? それぐらいだったら普通に忙しいだけなんじゃない?」
「そう……だよね」
瑛奈の言う通り、本当に手紙のやり取りならば十日くらい返事が来なくても、これほど思い悩むことはない。入れ替わりという特殊な状況下だからこそ、美雨のメンタルが心配なのだ。
「うん。心配することないよ。もし心配ならもう一度こっちから送ってみるのもありだと思う」
「もうちょっと待ってみて、それでも来なかったらそうしようかな」
視界の端に映る窓の外の雪が、先ほどよりも一層激しく吹雪いている。瑛奈の言い分は最もで、これ以上、彼女たちに余計な心配はかけられない。
「そういえばさ、話は変わるんだけど、この学校って修学旅行いつだっけ」
美雨のノートの話から話題を変えようと、僕は最近何かと僕の方の学校で話題になっている修学旅行の話を振った。とはいえ、僕も修学旅行の話は美雨が持って返って来た手紙や、江川くんとのメッセージのやり取りでしか聞いていないけれど。確か、北海道の、それも美瑛や富良野に行くらしい。今僕が入れ替わり先で生活しているところに行くなんて、すごい偶然だ。
「修学旅行? それなら二年生の秋って聞いたような」
「沖縄でしょ。北海道から沖縄なんて、ありがちすぎるよね」
「沖縄なんだ〜知らなかった」
「えー美雨、修学旅行に興味なさすぎない?」
「はは、そうかも……」
実際は興味がないというより、こちらの世界で美雨として修学旅行に行けるかどうか、あやふやだからついていけないだけだ。
「まだ先だけど、楽しみだね」
和湖がパチンと手を叩いて嬉しそうに微笑んだ。僕は美雨として行けるかどうかは分からないけれど、もし行けなくても美雨が友達と沖縄旅行を楽しむ姿を想像して、甘い気持ちが弾けた。
「あれ、美雨ってばやっぱり楽しみなの?」
「素直じゃないねえ」
顔にニヤケが出てしまっていたのか、いつも通り二人が僕を揶揄う。
この優しく穏やかな時間はいつまで続くのだろうか。
美雨からのメッセージが途絶えた今、期待以上に膨らむ不安が、どうしても頭の端の方に居座ってどいてくれなかった。