僕は、みんなと同じようにわーっと拍手をする寸前で、手を止める。
いま、彼女は何て言った?
確か、「令和九年度」って。
おかしい。僕が生きている世界は、二〇二四年——令和六年だ。
でも聞き間違いじゃなければ、さっきのアナウンスは「九年」と言った。そこに違和感を抱いている人は誰もいない。僕は、途端に頭がズキズキと痛くなるような心地がして、うえ、と小さくその場でえずいた。
幸い、誰にも気づかれず、それ以上の大ごとにはならなかった。
美雨の暮らしているこの世界は、二〇二七年の世界……なのか。
思えば一回目の入れ替わりの時だって、入れ替わり先の人間の部屋で、古臭い筆箱や分厚いゲーム機を目にしていた。おかしいな、とは感じたが、そういう趣味の人なんだと思っていた。
この世界でも、僕は年度を確認することがなかった。
入れ替わり中はスマホも相手のものを持つことになる。僕は、あまり他人のスマホをじろじろ見るのは好きではないので、必要最低限の使用に抑えていた。せいぜい瑛奈や和湖、母親と連絡をとる時ぐらい。学校でも、日付を意識することはあっても、わざわざ分かりきった年度を確認しようとしなかった。
僕はてっきり、美雨とは同じ年代を生きているのだと思っていた。
でも本当は違ったのだ。
僕と美雨は、時代をすれ違っている——。
あまりにも重大な事実に気づいて、心臓がドクン、ドクンと大きく脈打つ。
そうだ。木曜日の九時に話題のドラマが見られなかったのも、あのドラマが二〇二七年に放送されているものだからだ。考えてみればとても単純なことだった。
気づいてみれば、確かにびっくりすることではあったが、それでもこの入れ替わりの生活において、何か支障があるわけではないと感じた。
開会式中は動揺しまくりで汗が止まらなかったものの、退場して応援席に座る頃には、なんとか暴れていた心臓も落ち着いていた。
「美雨、まだ全然動いてないのにもう汗だくじゃん。これ使いな」
「あ、ありがとう」
みんな、「寒い寒い」と言っているのに、自分だけ瑛奈から渡されたタオルで汗を拭っている。この先どんな一日になるのか——想像することに精一杯になっていた。
いま、彼女は何て言った?
確か、「令和九年度」って。
おかしい。僕が生きている世界は、二〇二四年——令和六年だ。
でも聞き間違いじゃなければ、さっきのアナウンスは「九年」と言った。そこに違和感を抱いている人は誰もいない。僕は、途端に頭がズキズキと痛くなるような心地がして、うえ、と小さくその場でえずいた。
幸い、誰にも気づかれず、それ以上の大ごとにはならなかった。
美雨の暮らしているこの世界は、二〇二七年の世界……なのか。
思えば一回目の入れ替わりの時だって、入れ替わり先の人間の部屋で、古臭い筆箱や分厚いゲーム機を目にしていた。おかしいな、とは感じたが、そういう趣味の人なんだと思っていた。
この世界でも、僕は年度を確認することがなかった。
入れ替わり中はスマホも相手のものを持つことになる。僕は、あまり他人のスマホをじろじろ見るのは好きではないので、必要最低限の使用に抑えていた。せいぜい瑛奈や和湖、母親と連絡をとる時ぐらい。学校でも、日付を意識することはあっても、わざわざ分かりきった年度を確認しようとしなかった。
僕はてっきり、美雨とは同じ年代を生きているのだと思っていた。
でも本当は違ったのだ。
僕と美雨は、時代をすれ違っている——。
あまりにも重大な事実に気づいて、心臓がドクン、ドクンと大きく脈打つ。
そうだ。木曜日の九時に話題のドラマが見られなかったのも、あのドラマが二〇二七年に放送されているものだからだ。考えてみればとても単純なことだった。
気づいてみれば、確かにびっくりすることではあったが、それでもこの入れ替わりの生活において、何か支障があるわけではないと感じた。
開会式中は動揺しまくりで汗が止まらなかったものの、退場して応援席に座る頃には、なんとか暴れていた心臓も落ち着いていた。
「美雨、まだ全然動いてないのにもう汗だくじゃん。これ使いな」
「あ、ありがとう」
みんな、「寒い寒い」と言っているのに、自分だけ瑛奈から渡されたタオルで汗を拭っている。この先どんな一日になるのか——想像することに精一杯になっていた。