『桜晴へ
 今日は話さないといけないことがたくさんあります。……というか、謝らないといけないことがあるの。
 クラスに伊藤くんっているでしょ? 昼休みにその子から、桜晴が小説を書いているのを馬鹿にされて、ついカッとなって「人の趣味を笑うなんて悪趣味で、最低だ」って言い返してしまいました。それも、私自身の口調で。彼には「いつから女になった? 二重人格? 気持ち悪い」って言われてしまって……。本当にごめんなさい。もっと、発言には細心の注意を払うべきだった。それが、私のミスで桜晴の名誉を傷つけてしまいました。なんとお詫びを言ったらいいか、正直分かりません。
 でも、これだけは信じてほしい。私は、桜晴の趣味を馬鹿にしてきた彼が、本当に許せなかったの。あ、桜晴が小説を書いていることは、この時初めて知りました。でも、どんな趣味だって笑っていい理由にはならない。それに、小説を書けるなんて、すごく素敵なことだって尊敬してる。実はさっき、桜晴が書いた小説を読んじゃいました。とてもジーンと来て、泣いちゃった。勝手に読んでごめん。でも桜晴は才能あると思う。もしかして、小説家になるのが夢なのかな? もしそうだとしたら、応援します。
 私は今でも伊藤くんのことを許せないし、今後も馬鹿にされたら言い返すつもりです。次からはちゃんと、口調には気をつけます……!
 あと、伊藤くんから桜晴が中学時代に学校で小説を書いていたって話を聞かされたことが、ちょっぴり心配です。これって、ペナルティの対象になるのかな……? だとしたら、不意の出来事だったとはいえ、これも私のミスです。ごめん……。
 私はもっと、桜晴と話してみたいし、もっとあなたのことを知りたい。
 だからどうか、今日のことで入れ替わりが終わりませんように。
 またこうして一週間後もノートでやり取りできることを願っています』

 ノートを書き終えると、桜晴と本当に目の前で対話をしているような心地になっていた。彼は私の前にいないのに、こうして言葉を交わしている。私たちはもう、友達と言っても良いんじゃないだろうか。
 彼がこのノートを読んでどんな反応をするか、ちょっぴり怖いし、もしかしたら幻滅されてしまうかもしれない。その時はその時だ。後の選択は彼に委ねるしかない。
 願わくば、もう少し彼と長くこの非日常な生活を楽しめますように。 
 ひっそりと祈りながら、今日も眠りについた。