『君に触れたい』

♪♪♪
この気持ちを伝えたら
僕の恋は終わってしまう
そんな事は分かってた
それでも僕は願ってしまった
君の瞳に映る事を
君の為に輝く事を

友達なら
ずっと一緒にいられるの?

時が経てば忘れられると思ってた
記憶はいつか塗り替えられると思ってた
こんなに苦しくなるなら
君を想う気持ちになんて
気付かなければ良かった

君に触れたい
そんな願いはもう叶わないけど
いつでも僕は君を想うよ

君が道に迷った時は 
沢山の星を集めて道しるべを作る

記念日にはロマンチックな雪を降らせよう

淋しい夜には
君を照らす月になる

その瞳 その笑顔 その全てを包み込む
夜空があることを忘れないで

いつでも君の幸せを祈ってる

淡い淡い夢の中
君の背中に手を伸ばした

♪♪♪


 掠れた声と、ギターだけの世界。
 会場からは、啜り泣く声がする。
 儚くも力強い声と、冬哉の作った切ないラブソングは見事に客の心を掴んでいた。
 
(あの人は……)
 再び視線を向ける。
 静まり返った会場で、一筋の涙を拭いもせず、その人はやはりこっちを見つめていた。
 歌に共感してくれたのか、頬が一筋濡れている。

 ライブは冷めやらぬ熱を保ったまま幕を閉じた。
 楽屋に帰ってからも、あの人が頭から離れない。
 ライブハウスの常連客でもなさそうだ。
 そもそも、ライブ慣れもしていないように感じられた。
 今日きたのは、友達でも出てたのか? さまざま考えを張り巡らせても答えなど出るわけもない。
 
 楽屋を飛び出して会場まで探しに行ったが、その人の姿はすでにそこにはなかった。