「こんばんは!! Empathy⇄Infectionです!」
冬哉のたった一言で、ライブハウスが熱気に包まれた。
挨拶に合わせてドラムとベースが軽く音を合わせる。
「動画やSNSでも報告したとおり、エンフェクのボーカルをしてくれていた亮が脱退しました。今回、インストにしようか……それとも参加を見送るか悩んだんだけど……」
冬哉の言葉にファンが反応する。
その反応に、参加を見送らないで良かったと冬哉が返す。
「今回は俺っちの友達にサポートに入ってもらうことにしたから、紹介するね。獅月でーーす!!」
こんな風に紹介されると、流石に少しプレッシャーだと思いながらも、獅月の顔は馴染みの客なら知っている。
つくづく、ここでバイトしていて良かったと思った。
「ここのバイト君じゃん」
「歌ってるんだ?」
「バンドやってないのかと思ってた」
ザワザワと、いろんな声が飛び交う。
「どうも中島獅月です。今日だけ冬哉の押しに負けて歌わせてもらいます。よろしく」
会場がドッと沸いた。
三組目ということもあり、ほとんどの客がほろ酔いなのも良かった。
学校の女子は思っていたよりも多く残っている。まあ、楽しんでくれればそれでいいと気持ちを切り替えた。
「じゃあ、早速歌いまーす!!」
冬哉が挨拶を早々に切り上げ、客の熱気が冷めないうちにギターを響かせた。
ファズの効いた音が鳴り響くと、タイミングを合わせてドラムとベースが入る。
緊張などしてる場合じゃない。
エンフェクの音を聴くだけで心が滾る。
がなりの効いた歌声が合わさった瞬間、オーディエンスから今日一番の雄叫びにも近い声援が飛ぶ。
「一曲目から飛ばすじゃん」
「流石だな。客の掴み方、完璧」
「獅月君、カッコイイ」
「観に来て良かったね」
冬哉の読みは当たった。
誰もが演奏に夢中になっている。
これがいつも冬哉が見ている光景。それを同じ位置から見るのは優越感でしかなかった。
この熱狂の渦に飲まれるどころか、その中心で更なる渦を生み出す。
飛び散る汗と酒と人の匂いが、さらにオーディエンスを熱狂の渦へと誘う。
練習の時の“完璧な歌”など、どこにも存在していない。それは自分の魂そのものだった。
あっという間に二曲を歌い切ると、会場の熱気は最上昇を極める。
客の熱烈な歓声と、エンフェクの音。全てを取り巻く空気。
会場が一つになった気がした。
一度気持ちを落ち着かせるために、ペットボトルを取って一気に飲み干す。
「最後の曲は、新曲です」
冬哉が落ち着いたトーンで話し始めると、客もそれにつられて静まった。
全員の息が上がったまま、冬哉の言葉に耳を傾ける。
冬哉が曲の説明をしている間に、呼吸を整えながら会場を見渡すと、一人の客と目が合った。
会場の丁度真ん中ら辺。微動だにせずじっとこっちを見ている。
知っている人ではないし、同じ高校にもいないと思った。人の顔を覚えるのが得意だからよく絡んでくる生徒は学年が違えど覚えている。
その人は大きな瞳を瞬きもさせず、ただ一直線に俺を見ていた。
自分の歌に感動してくれたのかと思いながら、何故かその人から目が離せない。
「獅月、ラストいける?」
「あ、あぁ。じゃあ、最後の曲、聴いてください。『君に触れたい』です」
一度深呼吸をすると、それまでの熱気が嘘のように静まり返った。
ステージだけがまるで別世界のような輝きを放つ。
獅月だけに当てられたスポットライトが、星空のようにキラキラと照らしていた。
一度深呼吸をすると、それまでの熱気が嘘のように静まり返った。
ステージだけがまるで別世界のような輝きを放つ。
獅月だけに当てられたスポットライトが、星空のようにキラキラと照らしていた。
冬哉のたった一言で、ライブハウスが熱気に包まれた。
挨拶に合わせてドラムとベースが軽く音を合わせる。
「動画やSNSでも報告したとおり、エンフェクのボーカルをしてくれていた亮が脱退しました。今回、インストにしようか……それとも参加を見送るか悩んだんだけど……」
冬哉の言葉にファンが反応する。
その反応に、参加を見送らないで良かったと冬哉が返す。
「今回は俺っちの友達にサポートに入ってもらうことにしたから、紹介するね。獅月でーーす!!」
こんな風に紹介されると、流石に少しプレッシャーだと思いながらも、獅月の顔は馴染みの客なら知っている。
つくづく、ここでバイトしていて良かったと思った。
「ここのバイト君じゃん」
「歌ってるんだ?」
「バンドやってないのかと思ってた」
ザワザワと、いろんな声が飛び交う。
「どうも中島獅月です。今日だけ冬哉の押しに負けて歌わせてもらいます。よろしく」
会場がドッと沸いた。
三組目ということもあり、ほとんどの客がほろ酔いなのも良かった。
学校の女子は思っていたよりも多く残っている。まあ、楽しんでくれればそれでいいと気持ちを切り替えた。
「じゃあ、早速歌いまーす!!」
冬哉が挨拶を早々に切り上げ、客の熱気が冷めないうちにギターを響かせた。
ファズの効いた音が鳴り響くと、タイミングを合わせてドラムとベースが入る。
緊張などしてる場合じゃない。
エンフェクの音を聴くだけで心が滾る。
がなりの効いた歌声が合わさった瞬間、オーディエンスから今日一番の雄叫びにも近い声援が飛ぶ。
「一曲目から飛ばすじゃん」
「流石だな。客の掴み方、完璧」
「獅月君、カッコイイ」
「観に来て良かったね」
冬哉の読みは当たった。
誰もが演奏に夢中になっている。
これがいつも冬哉が見ている光景。それを同じ位置から見るのは優越感でしかなかった。
この熱狂の渦に飲まれるどころか、その中心で更なる渦を生み出す。
飛び散る汗と酒と人の匂いが、さらにオーディエンスを熱狂の渦へと誘う。
練習の時の“完璧な歌”など、どこにも存在していない。それは自分の魂そのものだった。
あっという間に二曲を歌い切ると、会場の熱気は最上昇を極める。
客の熱烈な歓声と、エンフェクの音。全てを取り巻く空気。
会場が一つになった気がした。
一度気持ちを落ち着かせるために、ペットボトルを取って一気に飲み干す。
「最後の曲は、新曲です」
冬哉が落ち着いたトーンで話し始めると、客もそれにつられて静まった。
全員の息が上がったまま、冬哉の言葉に耳を傾ける。
冬哉が曲の説明をしている間に、呼吸を整えながら会場を見渡すと、一人の客と目が合った。
会場の丁度真ん中ら辺。微動だにせずじっとこっちを見ている。
知っている人ではないし、同じ高校にもいないと思った。人の顔を覚えるのが得意だからよく絡んでくる生徒は学年が違えど覚えている。
その人は大きな瞳を瞬きもさせず、ただ一直線に俺を見ていた。
自分の歌に感動してくれたのかと思いながら、何故かその人から目が離せない。
「獅月、ラストいける?」
「あ、あぁ。じゃあ、最後の曲、聴いてください。『君に触れたい』です」
一度深呼吸をすると、それまでの熱気が嘘のように静まり返った。
ステージだけがまるで別世界のような輝きを放つ。
獅月だけに当てられたスポットライトが、星空のようにキラキラと照らしていた。
一度深呼吸をすると、それまでの熱気が嘘のように静まり返った。
ステージだけがまるで別世界のような輝きを放つ。
獅月だけに当てられたスポットライトが、星空のようにキラキラと照らしていた。