「獅月、冬哉、おはよーん」
「エリちゃんおっはー。今日も遅刻ギリギリよぉ」
「えっへっへ〜。ファンに捕まっちゃってさぁ」
「男子?」
「むぅ……女子ぃ〜!! 私は女子にしかモテないって知ってるでしょ!? 冬哉の意地悪!」
冴島エリは、自分のスタイルを活かして読者モデルをしている。
エリの身長は百七十センチで、ファンから「王子様」と呼ばれている。
性格もサバサバしていて、話しかけられれば、誰とでも喋るからファンはどんどん増えていく。女子に限定されているが。
「獅月も笑ってないで、冬哉のこと叱ってよ」
「冬哉、ダメだぞ」
「テキトーじゃん」
エリは座る間もなく、隣のクラスの女子から声を掛けられた。どうやらファンのようだ。
「エリちゃんも忙しいねぇ」
「冬哉もな」
苦笑いをするとチャイムが鳴り、ボーカルの話は一旦保留になった。
エリのことをモテモテだと言っているが、冬哉はさらに人気が高い。優しそうな柔らかい顔立ちにサラサラの明るい髪、その上ギターを弾く姿のギャップで大体の人は魅了される。
その冬哉のバンドの誘いを断っている理由は、歌が嫌いだからではなく、ステージに立つのが苦手なわけでもなく、彼らが“本物”を目指しているというところにある。
俺は音楽を本業にするつもりはない。ならば最初から興味本意で加入するべきではないと考えている。
一方、冬哉は俺を本気にさせる自信があるから誘っていると言うのだが……。
「獅月、本当にお願い!! 次の一回だけでも良いからさ。対バンいるし、迷惑かけらんないんだ。ちゃんと助っ人って紹介するから」
今回の冬哉は諦めが悪い。断り続けていたが、根負けしてついに放課後OKしてしまった。
「本当に? マジで助かる!」
冬哉のこの笑顔にどうも弱い。獅月は頭をぽりぽりと掻きながら、『まぁいいか』と思ってしまう。
「今日、バイト?」
「いや、特に予定ない。メンバーと集まるんだろ?」
「獅月は話が早いわ〜」
ライブハウスに集まるからと言って、学校を出た。
メンバーと現地集合になっているという。
ハンバーガーで腹ごしらえをした後、ライブハウスへと移動した。
ライブハウス【black ASH】は、毎晩のように色んなバンドがライブを行っている。
元は冬哉の紹介でバイトさせてもらうこととなったが、今はここで働く時間が一番好きだ。
色んな音楽を楽しめるし、自分の知らないコアな話を聞くのも楽しい。
高校を卒業したら、本格的にこのライブハウスで働かせてもらう予定だ。
「お疲れ様っす」
バイトでも世話になってるオーナーに挨拶をすると、早速メンバーと打ち合わせに入る。
「獅月、今回はありがとな。助かったよ」
先に来ていたメンバー二人が歓迎する。
「そんな風に言うなよ。大変だったな。急に脱退なんて」
「仕方ねぇよ。俺らもあいつが抜けるのは覚悟してたとこあるから」
「だな。あいつの家、妙にお堅くてさ。今までバンド活動させてくれてたのが逆に奇跡だったっていうか……」
バンドのドラムの伊原響平は強面だけど、面倒見が良く物腰の柔らかい良い奴だ。
ベースの間宮伊織は、ぱっと見、冬哉と雰囲気がそっくりで双子と言われたり間違われたりしている。性格は冬哉よりも落ち着いていて、穏やかな奴。
「いいバンドなのに……」と俺が言うと「こればかりは口出せねぇから」と響平が肩を落とした。
「さぁ、とりあえず時間ないから練習しようぜ。今回は新曲が一曲入るから、とりあえず獅月は聴いてて」
「オケ」
新曲は切ない恋のバラードだった。
「エリちゃんおっはー。今日も遅刻ギリギリよぉ」
「えっへっへ〜。ファンに捕まっちゃってさぁ」
「男子?」
「むぅ……女子ぃ〜!! 私は女子にしかモテないって知ってるでしょ!? 冬哉の意地悪!」
冴島エリは、自分のスタイルを活かして読者モデルをしている。
エリの身長は百七十センチで、ファンから「王子様」と呼ばれている。
性格もサバサバしていて、話しかけられれば、誰とでも喋るからファンはどんどん増えていく。女子に限定されているが。
「獅月も笑ってないで、冬哉のこと叱ってよ」
「冬哉、ダメだぞ」
「テキトーじゃん」
エリは座る間もなく、隣のクラスの女子から声を掛けられた。どうやらファンのようだ。
「エリちゃんも忙しいねぇ」
「冬哉もな」
苦笑いをするとチャイムが鳴り、ボーカルの話は一旦保留になった。
エリのことをモテモテだと言っているが、冬哉はさらに人気が高い。優しそうな柔らかい顔立ちにサラサラの明るい髪、その上ギターを弾く姿のギャップで大体の人は魅了される。
その冬哉のバンドの誘いを断っている理由は、歌が嫌いだからではなく、ステージに立つのが苦手なわけでもなく、彼らが“本物”を目指しているというところにある。
俺は音楽を本業にするつもりはない。ならば最初から興味本意で加入するべきではないと考えている。
一方、冬哉は俺を本気にさせる自信があるから誘っていると言うのだが……。
「獅月、本当にお願い!! 次の一回だけでも良いからさ。対バンいるし、迷惑かけらんないんだ。ちゃんと助っ人って紹介するから」
今回の冬哉は諦めが悪い。断り続けていたが、根負けしてついに放課後OKしてしまった。
「本当に? マジで助かる!」
冬哉のこの笑顔にどうも弱い。獅月は頭をぽりぽりと掻きながら、『まぁいいか』と思ってしまう。
「今日、バイト?」
「いや、特に予定ない。メンバーと集まるんだろ?」
「獅月は話が早いわ〜」
ライブハウスに集まるからと言って、学校を出た。
メンバーと現地集合になっているという。
ハンバーガーで腹ごしらえをした後、ライブハウスへと移動した。
ライブハウス【black ASH】は、毎晩のように色んなバンドがライブを行っている。
元は冬哉の紹介でバイトさせてもらうこととなったが、今はここで働く時間が一番好きだ。
色んな音楽を楽しめるし、自分の知らないコアな話を聞くのも楽しい。
高校を卒業したら、本格的にこのライブハウスで働かせてもらう予定だ。
「お疲れ様っす」
バイトでも世話になってるオーナーに挨拶をすると、早速メンバーと打ち合わせに入る。
「獅月、今回はありがとな。助かったよ」
先に来ていたメンバー二人が歓迎する。
「そんな風に言うなよ。大変だったな。急に脱退なんて」
「仕方ねぇよ。俺らもあいつが抜けるのは覚悟してたとこあるから」
「だな。あいつの家、妙にお堅くてさ。今までバンド活動させてくれてたのが逆に奇跡だったっていうか……」
バンドのドラムの伊原響平は強面だけど、面倒見が良く物腰の柔らかい良い奴だ。
ベースの間宮伊織は、ぱっと見、冬哉と雰囲気がそっくりで双子と言われたり間違われたりしている。性格は冬哉よりも落ち着いていて、穏やかな奴。
「いいバンドなのに……」と俺が言うと「こればかりは口出せねぇから」と響平が肩を落とした。
「さぁ、とりあえず時間ないから練習しようぜ。今回は新曲が一曲入るから、とりあえず獅月は聴いてて」
「オケ」
新曲は切ない恋のバラードだった。