「あの本ありがとう! やっとタイミングが合って読めたよ!」
夏休みの半ば。
三日振りに会った麗華が、開口一番に話して来たのは、私が以前あげた本のことだった。
一人でじっくり読みたいと、家族がいないタイミングを測っていると言っていたが、ようやく読めたようだった。
「どうだった?」
「すごく良かったし、二人の絆みたいなものを感じた。互いのことを認め合ってて、作品もリスペクトしていて、この二人にしか書けない物語なんだろうなって」
麗華はその後も熱弁していて、私と同じことを考えていたと分かる。
それが嬉しくて、何だか分身みたいで、思わずその言葉を口にしていた。
「私達、なんだか双子みたい」
「あ、確かに! 前世はそうだったんじゃない? 妹とも、ここまで感性合わないもん」
麗華は大きく頷き、また無邪気に笑う。
小説について話している時は、まるで少女に戻ってしまったようにあどけない表情を見せてくる。
それがまた可愛かった。
「妹さんいるの?」
「あ、言ってなかったっけ? 現在、中二。あの子は小説より漫画派だから」
「へえー。おすすめとかあったら教えてよ」
今度は漫画について盛り上がる。
私はあまり読まないがその話も面白く、新たな世界を知ることが出来た。
でも互いに、自分が好きな作品を読むように押し付けるような事はなく、相手の好きな作品を認め合うという理想の関係だった。