「だったら、友達辞めて双子になっちゃう?」
「え?」
 あまりにも想定外の言葉に私の涙は引っ込み、足を止め振り返っていた。

「文が言ったんじゃない? 私達、双子みたいだって。確かに私達は互いの欠点を補い合う、最高のパートナーだと思うの!」
「そんな。麗華に欠点なんて……」
「あるよ。カッコ悪い自分を認められない。恥ずかしいことにフタしてしまう。すぐに人間関係断ち切ろうとする。今だって、文が秘密を言ってくれなかったらこうして話せなかった。ね? 欠点だらけなんだよ私!」
 清々しい程に言い切った麗華にクスッと笑うと、張り詰めていた空気が和んだ。
 それに対し、麗華も可愛らしく笑うと、一呼吸置いて話し始めた。
「私の夢はね、『この世に私の綴った小説を出すこと』なんだ。 ……まあ、一次も通らず落選中なんだけどね。だから、一緒に書いてくれない? 私達の物語を」
「え?」
 それはまるで、私達を引き合わせてくれた小説。『君と綴る未来』のようだった。

「私の実力では刃も立たない世界。だけど二人で書けば、もしかしたら貫けるかもしれない。私、適当なこと言ってるんじゃないよ。文の綴った小説読んで思ったの。一緒に書きたいって」
 窓からの景色はいつの間にか雨が上がっていて晴れ渡り、淡い青空に広がる大きな虹が広がっていた。
 それは私達が出会ったあの日みたいで、私は思わず「この虹を背景に、どんなシュチュエーションを描くか」を聞いた。
 その問いに麗華は虹をしばらく眺め、一言。

「『小説執筆が好きな二人が、虹を眺めながらシチュエーションについて語り合っている場面』かな? 今まで読んだ物語を引き合いに出して、『あの場面は美しかった』とか、『あのシーンは感動した』とかで何時間も話してて、気付けば虹が消えていた。とか?」
 麗華の話したシチュエーションは、あの日私が思い浮かべていた理想の場面と同じだった。

 私は麗華の手を取り握り締めた。
 今まで辛くても、生きてて良かった。
 そう思いながら。

 私達は互いに必要な存在で、まるで分身のようで。
 そんな私達が足りないものを補い合えば、憧れの小説家「君と綴る未来」のような二人を目指せるのではないか。
 そんな夢を麗華となら本当に叶えてしまいそうで、私はただ手を強く握り締めていた。
 握り返してくれた手は、「私もだよ」と返事をしてくれるようで、私達は顔を見合わせてただ笑った。
 広がる青空と虹が私達の門出を祝ってくれる中、私達が綴る物語が今始まった。