「ごめん。麗華が怒って当然だね」
「……あ、えらそうに言ったけど私も同じことしていたから。妹にグッズ渡せたから良かったけど、本当に最低だったと思ってる。それに小説執筆再開したけど、バレたら恥ずかしさから無視とかして最低だよね? 妹が言われたみたいに、キモいとか思われるのかなって……。ごめん、指大丈夫?」
「そんなの、勝手に言わせておいたら良いんだよ」
そう言い切った私を見た麗華は、クスッと笑う。
「その通りだね。私……、みっともないな」
「それを言えば、取り繕って麗華を無視し続けていた私はどうなるの? 最低だよね?」
互いの顔を見合わせて、苦笑いを浮かべてしまう私達。
ああ。キラキラ輝いていたあの夏には、戻れないのだなって。
「……ねえ、文はこれからどうするの?」
先に口を開いてくれたのは、麗華からだった。
「推し活もSNSもやめる。ハブられるだろうけど良いの。元々、私に居場所なんかなかったし」
私はあの日のことを話した。辛かったあの日のことを。
「そっか。辛かったね。文、良かったらだけど。私が居るよ」
「え?」
「あの夏の続きをしようよ。またあの頃のように一緒に本屋さんに行って、カフェでお喋りして、パフェを食べる。本屋の店長さん、文が夏休み明けから来店しないと心配してくれていたよ? 今から一緒に行かない?」
その顔も声もその提案も優しくて、私は全てを受け入れてくれる麗華の元に飛び込みたかった。
だけど。
「ありがとう。……でもダメだよ。私は麗華を裏切った。だから友達には戻れない」
そう。私は私が許せない。
転校初日に嬉しそうに話しかけてくれたのに突き放すことをし、散々無視し、親身になってくれたのに八つ当たりしてしまう。最後まで保身に走り、麗華が悪く言われていたのにフォローもせず笑って聞いていた。
そんな自分に吐き気がしていて、麗華が許してくれても、自分が許せない。
だから、今更そんなこと叶うわけ。
「今まで本当にごめんね。だから三学期も学校に来て。小説書いていること絶対誰にも言わないから」
「え? ……もしかして小説書いてること告白してくれたのは、私の為? 私が不登校になるって思って」
「違うよ。麗華に知って欲しかっただけ。それじゃあ、三学期にね」
私はスクールカバンを肩に掛け、教室を後にしようする。
溢れそうな涙を、必死に抑えて。