私が小説を書き始めたのは、小学校一年生の時だった。
 まあ小説と言ってもそんな凄いものではなく、大体の物語の流れや登場人物や世界を考えて、自由帳に書くぐらいだった。
 それぐらいなら子供のお遊びの範囲。友達もやっていたし、普通のことだった。
 だけど、その普通から外れたことをしたいと思ったのが小学三年の時。
 周りが習い事や、オシャレや、好きな男の子の話で盛り上がっている中。私は本を読み、本好きの友達と話していたけど、それだけでは飽き足らず設定や話の流れを書く次の段階、文章を書き始めていた。
 でも、ここまでする子は他にはおらず、本好きな友達にも話せていなかった。さすがにそこまでいくと、普通から外れてしまう。空気が読めない私にも、それぐらい分かっていた。
 だから家のいらない紙を全てもらって書いて、学年が上がったからと使わなくなったノートの余りを大事に使って。一人こっそり書いた小説を、ただ一人で眺める生活をしていた。
 そこに仲間などいない。だけど、それで良かった

 それを辞めたのは中学二年の時だった
 本ばかり読んでいる私に周囲がドン引きし、そして読書友達が去っていったから。
 そのうちに担任の先生が、「私がクラスで浮いている」とお母さんを呼び出して話したらしく、学校から帰ってきて開口一番に「お願いだから、みんなみたいに普通になって」と泣かれた。

 本を読むぐらいであれだけ引かれるなら、小説書いてると知られたらどうなるか。考えただけで、身震いを起こしていた。
 だから、私は筆を折った。
 高校ではもう失敗しないと本を好きな自分を封じて、自分を全て押し込めて、周りに合わせていく。その一心だった。
 息が出来なくなるぐらい辛くて、心が壊れてきていると分かっていても耐えるしかなくて、ただ叫びたかった。
 
 そんな時に麗華と出会った。
 あの夏休みは宝物だった。
 もし麗華が学校に来てくれたら辛い毎日を変えられるんじゃないかと、毎日毎日思っていた。叶う訳ないと思いつつ願っていた。
 だけど本当に麗華が目の前に現れてくれたのに、毎日は変わらなかった。違う、私が変えられなかった。
 それは私が弱いから。あの頃に戻りたくなかったから。

 でも麗華の小説読んで、やっと変わる決意をした。
 その物語が、今の私みたいだったから。
 この主人公みたいに、自分も変われるんじゃないかとか考えて。
 だけどその思いを言葉で言い表せない私は、思いを物語にして書き綴り、ノートの最後のページに貼り付けていた。
 それを麗華は何度も、何度も読んでくれた。