「はぁ〜。楽しかった」
 今日の目的を終わらせた私達は、最後に映えスポットの一つの言われる有名なカフェに来ていた。
 注文を終え、三人共にスマホを操作し始めたかと思えば、今日撮影した写真をメッセージアプリのアルバムに貼り付けていく。
「どれにしようかな?」
「あ、これいいな」
「こっちとか最高に映えてるんじゃない?」
 私も写真を見るけどそれらは全て同じに感じ、間違い探しを連想してしまった。
 しかしその後も三人はスマホを触り続けていて、せっかくカフェに来たのに会話がなくなってしまう。
 だから私は思い切って、家であったことを話してみた。
「え? 何それ?」とか「バカだな〜」とか軽く返してくれるのを期待して。
 しかし私の話に一切反応はなく、スマホのカチカチ音のみが返ってくる現状。
 私は、ははっと無理に笑いスマホに目を落とす。

「お待たせしました」
 何とも言えない空気を払拭してくれるように、若い女性店員さんが注文のパフェを持ってきてくれる。
 それはタワーパフェと呼ばれていて、細長いグラスにアイス、生クリーム、フルーツ盛り合わせで彩られており、甘いものが大好きな私の目は輝いた。
 本当は、スプーンを持ってすぐに頬張りたい。
 だけど、持つのはスマホだった。

「すごい! SNS通り!」
 そう言い、また撮影会が始まる。
 角度を変え、光を入れ、スマホの設定を変えて撮っている間に、せっかくのアイスは溶けていく。
「そろそろ食べない?」
 やんわりと話すけど、その声は届いていないのか返事は返ってこず、写真を撮り続ける三人。
 一人だけ先に食べたら? と思われそうだけどそうはいかない。四つ並べた写真も撮りたいそうで、それを邪魔することは出来ない。
 やっと食べれる頃には、よりアイスは溶けていて生クリームとフルーツに混ざり込んでいた。
 なのに三人は慌てることもなく、ショップで買ったレンのグッズを出し、「イケメン」と騒ぎ出す。
 はぁ。またか。
 私は黙々とパフェを食べながら、心で溜息を吐く。
 三人はSNS映えだけ考え、注文したものを食べない。
 そうゆう人が一定数居て、社会問題となっているというネット記事を中学の頃に見たことがあったけど、本当に目の当たりにするとは思わなかった。

「もう行くよ」
「あ、うん」
 結局、最後まで食べきれずにまた残してしまった。
 言いたいことがあるのに、それを言わずにいる私も根本は同じなのだろう。