私達が綴る物語


 こうして迎えた夏休み最後の日。
 私は学校の友達にSNS映えの写真を撮りに行こうと誘われたけど、それを断り麗華と一緒に居た。
 今日もあの本屋さんを巡り、カフェでお茶をしながら小説や日常について話をする。
 帰り時間が迫ってきた時、麗華はふっと無表情になり黙り込んでしまった。
 え? と思い私も口角を下げると、麗華は重い口を開いた。
「ねえ」
「何?」
「……私達って友達だよね?」
 突然の言葉に驚きつつも、これが友達でなければ何なのかと聞くと、麗華の表情は少し緩んだ。

「引かないで欲しいのだけど……」
「うん」
「文はさ……」
 麗華は次の言葉を出そうとするけど、口をキュッと結んでしまい黙り込んでしまう。
 
 正直問い詰めたい気持ちがあるけど、噤んだ言葉を無理に聞くのは相手を傷付けることだと知っている私は。
「あーあ。明日から学校だね」
 と話題を変えてみる。
「本当。そう言えば、文は高校どこなの?」
 話しながら見られる安堵の表情。
 話逸らして良かったと思いつつ、高校名を伝える。
「……え?」
 安堵の表情は一変して、こちらを見てくる麗華。
 あれ? あ、そっか。近くに高校は複数校あるのに、わざわざ遠くに通っているから驚いているのか。
 まあ、そうだよね。中学からあの高校に進学したのなんて私ぐらいだし、仕方がないよね。

 ピロロロロ。ピロロロロ。
 私のリュックから着信音が響く。
「どうぞ」
「ごめん」
 スマホの画面には「お母さん」と表示されていて、カフェから出て電話に対応すると、明日から学校だから早く帰ってくるようにとのことだった。
「明日から学校……」
 思わず溜息が出るが、それを表情に出さないように麗華の元に戻ると、何故だか満面の笑み。
 どうしたのだろうか?

「ごめん。お母さんが帰って来なさいだって……」
「あ、そっか。じゃあ帰ろう」
「ごめんね」
「いいの。いいの。明日から学校だしね」
 一つの憂いもなく笑う麗華。それが羨ましくて。
「夏休み。終わらなければ良いのに」
 気付けば、そう呟いていた。

「あ、ごめん。勉強とか嫌でさ」
 ははっと笑ってごまかす私に。
「すぐ会えるよ」
 麗華は、私の手を両手で優しく握ってくれた。
「うん、そうだよね。また都合付けて会おう。絶対だよ!」
「そうだね」
 私の言葉に、軽く返事をする麗華。
 いつもは具体的に約束してくれるのに。
 そう思い麗華を見つめると、その気持ちを感じ取ってくれたのか、彼女はその言葉を口にした。
「次会った時、さっき言えなかったことを話していい?」
 真っ直ぐな瞳で私を見つめ返してきた。
「うん、私も。相談とかして良いかな?」
「勿論だよ。次、会った時ね」
「うん!」
 こうして夢のような時間は終わり、現実へと戻っていった。
 麗華の話が気になりつつ、私自身も学校で上手くいっていないことを彼女に相談しようと決めた。
 今まではバカで、情けなくて、自業自得だと分かっていたから誰にも言えなかったけど。麗華には聞いて欲しいと思えた。学校のことだけでなく、今まで苦しんできたことを。
 だからそれを心の支えに、私は今日学校に来ることが出来た。