私達が綴る物語


「そう言えば。アイドルのレイ、好きなの?」
 帰り道で麗華が聞いてきた。
「え?」
「あ、いや。こないだ再会出来た時、紙袋からレイグッズが見えたから」
「……うん。まあ……」
 私は曖昧な答えしか返せなかった。
 本当は興味ないなんて、言えるはずが。

「そっか。カッコいいよねー」
「え? 好きなの?」
「いや、私じゃなくて……」

 ピコン。
 私のリュックから、メッセージアプリの通知音がする。
「あ、どうぞ」
 麗華は軽く手をひらを出してくれ、気を使わないように対応してくれた。
「ごめん」
 一言断りスマホを見ると、そこには友達からのメッセージ。
 レイのグッズが新たに発売されるから、買いに行こうとのことだった。
「はぁー」
 気付けば私は大きな溜息を吐いていた。
「どうしたの?」
 麗華の前だということを忘れて。

「あ、ごめん。何でもないの」
「何か悩んでいるなら聞くよ?」
「ううん。何でも!」
「そう?」
 麗華はこれ以上聞こうとはせず、次はいつ会おうかと話を変えてくれる。
 本当、この性格にどれほど救われてきたか。
「じゃあね」
 私達は手を振って別れる。
 学校の友達とはホッとする時間なのに、麗華とは淋しくもう終わってしまうのだと感じる時間。
 同じ友達との別れなのに、何が違うのだろう?

 そう思いながら家に帰った私は、「行こう」と返事をしつつ、埃を被ったレイグッズを見て溜息を漏らしていた。