かつて『和州國』を脅かした四大妖怪、鬼・狐・蛇・烏。
 かの大妖怪の気配に触発され、有象無象にわき出た妖魔は、多くの民の命を葬った。

 人に非ずものを退けるすべを持たなかった人々は、天に祈りを捧げるほかなかった。

 この事態を深く嘆いた初代・和州國君主は、巫術師の力を借り、四人の臣下に『人柱の契り』をほどこした。
 臣下は四大妖怪をその身に封印すると共に、宿主となり力を手に入れ、数多の妖魔を退けることに成功する。

 それから数百年と時は流れ――現在、和州國は四人の"あやかし憑きの領主"と、鎮め役を担う巫術師一門の宇賀神家によって安寧が保たれていた。


 あやかし憑きの領主は、代々うちに古の大妖怪を封印することを使命としている。
 だが、心身の負担は大きく、それを癒すのが巫術師一門の巫女であった。

 ある者は妾として多くの巫女を囲い、ある者は正妻としてたった一人の巫女を慈しみ、ある者は妻と巫女の役割を完全に離して扱った。

 そして、ある者――和州國"四大家紋"の序列第一席に君臨する鬼憑き領主はというと、まだ己の巫女を迎え入れようとは露ほどにも考えていなかった。