【第百七十六段】

 宮にはじめてまゐりたる頃、ものの恥づかしきことの数知らず、涙も落ちぬべければ、夜々まゐりて、三尺の御几帳(みきちやう)のうしろにさぶらふに、絵など取り出でて、見せさせたまふを、手にても得さし出づまじう、わりなし。