『枕草子』
 【第九十六段】

 御方々(おんかたがた)君達(きむだち)殿上人(うへびと)など、御前に人のいと多くさぶらへば、(ひさし)の柱によりかかりて、女房と物語りなどしてゐたるに、ものを投げ(たま)はせたる、開けて見たれば、
「思ふべしや、いなや。『人、第一ならず』は、いかに」
 と、書かせたまへり。