娘の十年後は、やはり明るいものだった。

 現在から五年後の三十歳に交際相手の男と婚姻を結び、七年後に第一子、十年後に第二子を授かり円満な家庭を手にしていた。

 また仕事も順調で、あれほど悩んでいたのが偽りのように業務をこなし、仕事を任され、新人教育まで担っていた。

「私も若い時は失敗ばかりだった」を口癖に、新人の失敗を庇い、良き上司となっていた。


「これが私?」

 娘は十年後の自身の姿に、ただ驚いていた。

 そして、それは我もそうだった。
 人間は成長をする生き物なのだと、改めて感じた。


『これで安堵しただろう? さあ、元の時代に帰るとしよう』

「はい! ありがとうございます!」

 我の神力で現在に戻って来た。


「神様、ありがとうございました! 安心しました!」

『ああ、これからは自身をもっと信じろ。分かったな?』


「はい! ありがとうございました!」

 娘は喜んで家路に向かっていく。


 その姿に、私は久しぶりに良き働きをしたと思い上がっていた。
 ……この行動が、娘の未来を変えてしまうなんて思いもせず……。