「宇津木君、もしかして藍とつきあってる……てカンジ?」

 一瞬、動きを止めたあと、陽介は苦笑しながら首を振った。

「残念ながら」

 否定した陽介の言葉に、平野は少しだけ意外そうな顔をした。


「そう。……あのさ、余計なお世話かもしれないけど」

 思案したような平野の表情に、また皐月のように藍の噂話かと陽介は身構える。


「あの子、いろいろ噂になっているけど、本当はそんな子じゃないから」

「え?」

「誘われればすぐついてっちゃうけどさ、あれ、男子が期待するような気持ちじゃないのよ。私と遊ぶのと同じ感覚で、男子とも二人で出かけちゃうの。ほら、小学校の頃ってみんな男女の関係なく仲良かったじゃない? それが成長するにつれて、男子は男子と、女子は女子と遊ぶようになってきて。藍って、そういうとこまるで小学生のまんまなのよ」

「ああ……わかる、それ」 


 それは、以前陽介も感じたことだ。藍は、まるで身内にするように他人に甘える。

 夕べの藍も、最初陽介が話した時には好きだという感情について、ぴんと来ない顔をしていた。そんな態度は、小学生みたいという平野の言葉はぴったりとくる。むしろ小学生の中には、藍よりよほどませている子だっているのではないだろうか。