「木暮、先生……」

 そうしてあ然としている陽介の腕から藍の体を引き離すと、その両手で抱え上げる。


「先生、藍は……!」

「……簡単に言えば、オーバーヒートで強制シャットダウンしたんだ。全く、これはメンテが大変だぞ。なんてことをしてくれたんだ」

「オーバーヒート? シャットダウン?」

 藍を横抱きにしたまま立ち去ろうとする木暮に、は、と陽介は我に返った。


「おい、どこに連れてくんだよ」

「安心したまえ。この子は、私の管理下にある」

「どういうことだよ、具合が悪いなら救急車とか……」

「必要ない」

 そう言って背を向ける木暮の肩を、陽介がつかんだ。


「藍をどこへ連れていく!! お前、藍になにをするつもりなんだ!!」

 木暮は、陽介の顔を見つめると、小さくため息をついた。

「藍もわかっている。意識があれば、何の問題もなく、私についてくるだろう」

「お前……一体……」

「私は」

 混乱する陽介を木暮は無表情で見つめると、小さく告げた。


「この子の、兄だ」



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