「好きだ、藍」

「好き、って……」

「お前が特別だから、キスしたし、抱きしめたい。他の女子には、こういうことしたいと思わない。お前だって、お兄さんや家族とはこんなことしないだろ?」

「こういうこと……の、好きって……」

 呟いたと思った藍の体から、急に力が抜けた。ずしりとした重みが陽介の体にかかってくる。


「藍?!」

 そのままくたくたと倒れ込んでしまった顔を覗き込むと、藍は目を閉じていた。どうやら、気を失ったらしい。

「藍?! 藍!!」

 声をかけても藍に反応はない。不安になってその頬に触れてみると、ひんやりとして血の気がなかった。


「え……?」

 ただ気を失っただけとは思えないその冷たさに、陽介はぞっとする。

「おい、藍! しっかりしろ!」

「静かにしないか、夜中だぞ」


 急に声をかけられて、陽介は勢いよく振り向く。立っていたのは、養護教諭の木暮だった。わずかな違和感は、白衣を着ていないせいだとすぐに気づく。