「気づかれたくないもん、そんなの。……私、嫌われちゃったよね」

 色素の薄い柔らかな皐月の髪を、諒がひと房ひっぱる。

「ばーか。そんなことで陽介はお前のこと嫌ったりしないよ」

「本当に?」

 ちら、と皐月はすがるように諒を見上げる。



「本当に。むしろあいつのことだから、あんなこと言ったお前の事の方を心配しているぞ」

 それを聞いて、皐月は瞬いた。

「陽介……私のことなんて、心配してくれるかな?」

「あたりまえだろ」

 確かに陽介なら、友達の様子がおかしければ心から心配するだろう。それは皐月もよく知っている。けれど、それがいざ自分の事になると、とたんに自信が持てなくなってしまう。