「諒」

「めずらしいな。陽介と、けんか?」

「見てたの?」

「あんなところで大声出してれば、嫌でも見えるさ」

 諒に言われて、皐月は、か、と頬を染めた。



 さっきは頭に血が上った状態だったが、冷静に考えればあたりにはたくさんの生徒がいた。

 今更ながらに恥ずかしくなって、皐月は頬を両手で隠す。



「うわあ、そうよね。みっともないことしちゃったなあ」

「しかもさ、あれだけ言われても、陽介鈍感だから皐月が何であんなこと言ったのか、まっっっったく気づいてないと思うぞ」

 諒は、どかりと皐月のとなりに腰を下ろす。皐月は肩を落として大きなため息をついた。