けれど、今の陽介はそれ以上に藍に惹かれているように見える。先ほどの陽介の表情を思い出すと、皐月の胸がずきりと痛んだ。

 陽介に彼女がいたことはない。だから自分が一番陽介に近い位置にいると思っていたし、周りからもそう言われてそのつもりでいた。

 その位置が、藍の登場で揺らいでいる。だから、心にもないあんなことを陽介に言ってしまった。皐月は、それを激しく後悔していた。



(嫌われちゃったかな)

「陽介の、ばか」

「サボりみっけ」

 小さく呟いた皐月の耳に、場違いに明るい声が聞こえた。