軽く息を切らせている陽介を見あげて、その女性は無表情のまま言った。
「ほっといて」
「そういうわけにはいかないよ。もし一人なら、危ないから一緒に」
「あれ」
彼女は振り返ると、置き去りにされた陽介の望遠鏡を指さした。
「置いといていいの?」
「え、いや」
大枚はたいて購入した望遠鏡だ。誰かがくる可能性は限りなく低いが、絶対に来ないとは言い切れない。
「あっ、ちょ……!」
陽介がためらっているうちに、その女性はさっさと行ってしまった。
「木ノ芽……だよなあ」
思わず名前を呼んでしまったが、もしかして人違いだっただろうか。第一、陽介の知っている木ノ芽藍とは、あまりに様子が違いすぎる。
(まあ、あの格好なら出会った方がビビるか)
陽介は、せめて見えなくなるまで、と、望遠鏡を気にしながらその背を見送った。
☆
「ほっといて」
「そういうわけにはいかないよ。もし一人なら、危ないから一緒に」
「あれ」
彼女は振り返ると、置き去りにされた陽介の望遠鏡を指さした。
「置いといていいの?」
「え、いや」
大枚はたいて購入した望遠鏡だ。誰かがくる可能性は限りなく低いが、絶対に来ないとは言い切れない。
「あっ、ちょ……!」
陽介がためらっているうちに、その女性はさっさと行ってしまった。
「木ノ芽……だよなあ」
思わず名前を呼んでしまったが、もしかして人違いだっただろうか。第一、陽介の知っている木ノ芽藍とは、あまりに様子が違いすぎる。
(まあ、あの格好なら出会った方がビビるか)
陽介は、せめて見えなくなるまで、と、望遠鏡を気にしながらその背を見送った。
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