陽介が部室に行くと、皐月の他に1年生が二人いた。

 部室を使うためにクラブの活動日を設定はしてあるが、普段は全体としての予定はない。各々、本を見たり時期の天体イベントを調べたりしている。
 一時期は、昨年の文化祭で陽介が提案して作ったプラネタリウムを見にくる生徒がよくいたが、最近は少なくなっていた。
 星に興味のある生徒がいつでも天体の資料に触れられるように、活動がなくても陽介は毎日部室にいるようにしていた。


 先にいた1年の二人は、確か剣道部との掛け持ちをしている二人で、今日は剣道部の活動がないのか、二人で本を読みながらのんびりと菓子を食べていた。

 天文部の活動がない時は、そんな風に時間つぶしの場所として使われることが多い。

 ちなみに、1年生は5人、2年生は2人。3年生が引退してしまった今は総勢7人の弱小クラブだ。


 陽介に気づいた皐月が、立ち上がった。

「陽介、今日は何かするの?」

「こないだの観察結果を置きに来ただけ。かなり大きな火球が見られたから」

 星の観察をしたときは、天候や雲の様子などを記録しておくことにしている。こうしてまとめた観測結果を、文化祭の時に展示発表することになる。


「ふーん。……あ、そういえば、陽介って藍ちゃんと仲いいの?」

 さりげなく聞こえるように注意深く言って、皐月はファイルを取り出している陽介の横に座った。