「藍!」

 呼ばれて、藍は下駄箱から取り出した靴を持ったまま振り返った。声をかけたのが陽介だとわかると、ぱ、と満面の笑顔になる。

 初めて夜の藍に会ってから2週間ほどになるが、いまだに陽介はこのギャップに慣れない。


「陽介君だ。どうしたの?」

「もう帰るのか?」

「うん。陽介君も?」

 藍は、陽介のカバンに目をやりながら、持っていた靴を下においた。あたりに友人らしき人影がいないところを見ると、ひとりで帰るようだ。

「もし時間あるならさ、ちょっと俺と一緒に来ないか?」

「えっ、どこか遊びに行くの? どこへ?」

 元気いっぱいで答える藍は、はじけるような笑顔だ。夜とは違って表情豊かな分、藍の感情が手に取るようにわかる。とはいっても、あまりにも夜に見る藍と違いすぎて陽介はやっぱり戸惑う。