『すみません! 夏休みの間、バイトに力を入れすぎて勉強がおろそかになってました!』

 陽介の高校では、バイト禁止ではない。バイトするときは学校に申請することになっているが、よほどのことがなければその申請が却下されることはない。

『元気にいばることか。そういや、何か買うとか言ってたな』

 父親ほどの歳の高木だが、気軽に、しかし親身になって生徒の相談に乗ってくれる頼もしい担任だ。



『はい。望遠鏡を買いました』

『天文部らしい買い物だな。あれ、高いんだろ?』

 ごにょごにょと陽介が値段を教えると、高木は目を丸くして俺の給料の、とぶつぶつ言いだしたがすぐ我に返る。



『ごほん。まあ、お前の場合は進路もはっきりしているし、対策も立てやすいだろう』

 一瞬だけ陽介は眉をひそめるが、すぐににぱっと笑顔に戻った。

『とりあえず目標は果たしたので、今後は勉強に力を入れていくつもりです』

『自覚があるなら大丈夫だな。来月の期末はがんばれよ。ああ、勉強のことでなくても、なにかあったら遠慮なく相談しろよ』

『はい。ありがとうございます』