「なんで、廃棄なんて簡単に言えるんだよ! だって、藍は……」

 陽介は、藍に視線を向ける。

「使えなくなったって……この体で、藍は、生きてたんだ……星がきれいだって言って……友達と楽しそうに笑ってたんだ! それを廃棄なんて簡単に」

「俺たちが平気だとでも思っているのか!!」

 陽介の言葉をさえぎって、弾けるように立ち上がりながら木暮が怒鳴った。おどろいた陽介は思わず振り向く。



「はっ。たかだか数週間一緒に過ごしただけのお前に藍のなにがわかる。こっちはあの子が生まれた時からあの笑顔を見てきたんだ」

 なげやりに言われた言葉には、木暮に対して陽介が初めて見る苛立ちが含まれていた。



「最初は、ただの機械だ、と思っていた。しょせん、チタンとシリコンに作られた藍のまがい物だと……だが、君も知っているだろう? この子の、温かさ、柔らかさを」

 陽介が、く、と目を見開く。木暮はどさりとまた椅子に腰を落とすと、悲痛な目を横たわる藍にむけた。