「研究者としては呆れるほど、なんともロマンチックな理由だよ。だが、ロマンチックだろうがなんだろうが、そのチャンスを我々は使うことにした。AIに感情を記憶させて行動をさせることはすでにあちこちで見かけるが、逆にAIが経験した記憶を人間に移し替えることは、今だ世界の他のラボでも、少なくとも公式には成功した事例がない。高校生活を送った藍の記憶と経験を、いつか目覚めるはずの藍に移し替えるんだ」
カップを手に立ち上がった木暮は、サーバーからコーヒーを入れる。ついでももう一つカップを取ると、陽介にも同じものを入れて渡した。
「ありがとうございます」
じ、とその黒い表面を陽介は見つめる。木暮は、もう一度椅子に座りなおした。
「素体は比較的簡単に作ることができた。だが頭脳の方は、想像以上に大変だった。予想外のバグの発生が頻繁に発生した。そのたびに藍は保健室に入り浸ることになったよ」
「ああ」
「なに他人事みたいな顔してる。とどめをさしたのはお前だぞ」
「俺?ですか?」
「喜怒哀楽を持つことが目標だったとはいえ、まさかAIが恋愛感情を発動するとは予想していなかった。それがプログラムに想定以上の負荷をかけたんだ」
「恋愛感情を発動……それってつまり」
息をのんだ陽介を、木暮はすがめた目でみている。
カップを手に立ち上がった木暮は、サーバーからコーヒーを入れる。ついでももう一つカップを取ると、陽介にも同じものを入れて渡した。
「ありがとうございます」
じ、とその黒い表面を陽介は見つめる。木暮は、もう一度椅子に座りなおした。
「素体は比較的簡単に作ることができた。だが頭脳の方は、想像以上に大変だった。予想外のバグの発生が頻繁に発生した。そのたびに藍は保健室に入り浸ることになったよ」
「ああ」
「なに他人事みたいな顔してる。とどめをさしたのはお前だぞ」
「俺?ですか?」
「喜怒哀楽を持つことが目標だったとはいえ、まさかAIが恋愛感情を発動するとは予想していなかった。それがプログラムに想定以上の負荷をかけたんだ」
「恋愛感情を発動……それってつまり」
息をのんだ陽介を、木暮はすがめた目でみている。