「アンドロイドとして制作され藍の記憶を持ったこの藍を、高校生として学校へと入学させた。俺は、そのお目付け役として養護教諭になった。藍がお前といて倒れた時、私がいたのは偶然じゃない。この藍は、常に私の監視下にあったんだ」

 そう言って木暮は、手にしたスマホをぶらぶらと振ってみせた。

「彼女に何かあれば、すぐにこちらに信号が送られるようになっている」

「自分の娘を……研究材料にしたのかよ」

 おもわず陽介の口からつぶやきが漏れる。木暮は、表情を変えることなく淡々と続けた。

「研究材料と言われればそれまでだが、このアンドロイド開発の責任者である父は、娘を溺愛していたよ。サンプルのためではなく、一人の親として。もちろん、母も俺も……藍は、家族に愛されて育った本当に普通の女の子だった。藍がいつ目覚めるかわからないと知った時、父はこの計画をついに実行することを決定した」

「本人に意識がないのに、か?」

「ないからこそ、だ。眠っている間にも、藍の体は成長し続けている。自分では経験できないまま過ぎてしまう学生としての思い出を、作ってやりたかったんだそうだ」

「思い出……」