「ここ……か?」

 あまりにも民家とはかけ離れている建物だが、その先にはもう歩けるような道はなかった。

 躊躇しながらその建物の前に立つと、そっとアルミの扉に手をかける。鍵はかかっておらず、思ったより軽くその扉は手前に開いた。

 薄暗い建物の中をのぞくと、コンクリの打ちっぱなしのがらんとした空間が見えた。家具のようなものは何もなく生活感はなかったが、荒れている様子もない。

(ここじゃないのかな)



 それでも中に入ってみると、左手の壁ある扉が少し開いていて、その隙間から光が漏れていることに気づいた。ためらいながらその戸をあけると、地下へと階段が続いている。

 陽介は覚悟を決めると、慎重にそこを降りて行った。



  ☆



 かすかな機械の音が、絶え間なく聞こえている。そこは、上にあった何もない空間とは違って、一面に様々な機械で埋め尽くされた部屋だった。

 部屋の真ん中にある細長い台に気づいた陽介は、目を瞠る。

 そこに横たわっているのは、藍だった。



「藍……っ!」

 近づこうとして、陽介は足を止める。その光景の異様さに気づいたのだ。