「まだ教師になりたいと言うのか? くだらない将来を選んで恥ずかしいと思わないのか。ろくに給料ももらえずにこき使われるだけだぞ」

 ふん、と秀孝は馬鹿にしきった態度で笑う。

「宇宙物理学を学びたい」

 そこで初めて、秀孝は眉をあげた。



「なんだって?」

「宇宙物理学を学んで、できればそのまま研究室に進みたい。まだ宇宙にはわからないことがたくさんあって、世界中の天文学者が様々な研究をしている。俺もそれを……」

「何を言っている」

 呆れたように、秀孝はため息をついた。



「そんなもの、一文の得にもなりはしないだろう。なんのためにそんな道を選ぶ? 人生の無駄遣いだ」

「俺は、医者にはなれない」

「当然今のままでは無理だろう。勉強が足りないだけだ。もっと真剣に……」

「医者という職業は尊敬している。でも、俺は兄さんのように身をつくして人を救うような医者にはなれない」

 父の言葉を遮っていった陽介に、秀孝は眉をひそめた。

 陽介が父に逆らうのは、覚えているかぎり初めての事だった。