当然のことながらその分勉強の時間は減ってしまうし、寝不足の頭では授業にも身が入らない。

 わかっているのに、夜になればそわそわと望遠鏡を用意する自分がいる。

 藍に避けられるようになってからは、夜の公園に藍が現れたことはない。けれど、もしかしたら、という小さな希望を持って、あいかわらず陽介は公園に通っていた。



 陽介は、ぎゅ、と両手を握りしめると背筋を伸ばした。

「父さん」

「なんだ」

「俺、医学部にはいかない」

「いかない、じゃくて、いけない、だろう。まだ取り返しのつかない時期ではない。頑張ろうという気は……」

「そうじゃない。他に学びたいことがあるんだ」

 身を乗り出すようにして陽介は続けた。



 陽介が将来医者になるということは、宇都木家では疑いもしない決定事項だった。兄も医者になり姉も医大に通っている。陽介自身もそれが当たり前だったし、医者になるのが嫌だったわけではない。

 だが、高校に入ってから、医者ではない未来を選べることに気づいた。もともと天文に興味があったために物理や地学が楽しく、それに関わる職業として教師を目指そうとした。

 自分で将来を決めた、と胸を張って両親に打ち明けた時、父にも母にもけんもほろろに却下された。落胆はしたが、家が医者であるから仕方がないと諦めてしまった。

 けれど、今は。