「そうじゃないよ、父さん」

 陽介は、深呼吸すると口を開いた。

「本当に星を見に行っているだけ。一緒に見ているのは、うちの学校の女子が一人だけだよ」

 その言葉に、ぴくりと秀孝は眉をあげた。



「そいつにたぶらかされているのか。狙いは、どうせうちの金だろう」

「全然違う。むしろ、袖にされてるのは俺の方だよ」

「ふん。なんにしろ、色恋にうつつを抜かして成績がさがったんだな」

 陽介は、それには返答できない。



 バイトをしていた時は、確かに勉強する時間が足りない自覚があって、少ない時間でもやりくりしてなんとかがんばっていた。

 けれど最近は、驚くほど意識が勉強に向かない。それを色ボケと言われれば、返す言葉はなかった。



 陽介は、ほぼ毎日、夜の公園に通っていた。今までも夜に星を見に出掛けることはあったが、せいぜい一週間に一度くらいだった。それも週末が多く、平日に出掛けることはほとんどなかった。

 約束したわけではないが、望遠鏡をのぞいていればたいてい藍が現れる。ぽつりぽつりと星の話をして、藍の背中が見えなくなるまで見守る。たったそれだけのわずかな時間のために、陽介は公園に通い続けた。