「恋人同士じゃないと、キスなんてしないよね」

「当たり前じゃん」

「なら、陽介君は、私の奇跡も、叶えてくれたんだね」

 陽介は、力強く頷く。

「ああ」

 藍は、ふわりと微笑んだ。陽介が今まで見た中でも一番嬉しそうに。透き通るほどに、儚く。



「ありがと。嬉しい。……陽介君」

「ん?」

「次は、陽介君の番だよ」

「俺?」

「そう。奇跡を叶えて。きっと……」

 言いかけた藍は、かくりと、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。



「藍!」

 二人の様子に気づいて、同じように空を見上げていた木暮が走ってくる。

「藍!! しっかりしろ! 藍!」

「静かに」

 そう言うと木暮は、陽介の体を調べ始めた。藍は、ぐったりしたままぴくりとも動かない。