「本当は、そうしたい」

 絞り出すように言った陽介を、藍はじっとみつめる。

「宇宙物理学を、もっと学びたい。ずっと、星の研究をしていきたい」

「どうして、そうしないの?」

 陽介は、すぐには答えずに空をあおぐ。また一つ、星が流れた。



「うちは病院をやっててさ、兄も姉も、もちろん俺も、医者になるものだと当たり前に言われてきた。親がさ、医者以外はろくでもない職業と思っているんだ。一度、教師になりたいって言ったら、田舎教師に成り下がる気かってめちゃくちゃばかにされた」

「教師になりたかったの?」

 流れた星の記録をつけながら、藍が聞く。



「以前はね。物理の面白さを教えたかった。でもそれからいろいろじっくりと考えてみて、俺のやりたいことは人に教えることよりも、もっと宇宙に関する謎を知って研究して解明する方だな、ってわかった。……宇宙の謎って、一つ見つけるとじゃあこれはこっちはって、限りがないんだ。今の技術を追っていくだけでも、今の俺には知らないことが多すぎて、知っていくたびにわくわくする」

 ふふ、と藍の小さな笑い声が聞こえて陽介は振り向く。