「ねえ、陽介君が願う奇跡って、何?」

「奇跡?」

 陽介はつい、星から視線を外して藍の横顔を見つめる。

「うん」

「奇跡、ねえ」

 陽介はしばらく考えた。



「今なら大学入学、って言いたいところだけど、それって別に奇跡じゃなくて自分の力だし、うーん、医者になるのも自分の努力だし……」

「陽介君、お医者さんになるの?」

 藍がこちらを向いて目があった。

「一応、そのつもり」

「天文関係のお仕事に就くのかと思ってた」

 陽介は、まさか、と言って藍の言葉を笑おうとした。

 けれど。



 やめた。



 将来の進路は、いつだって医者と言ってきた。家族も、担任の高木もそのつもりでいる。進路調査票には、一年の時から医学部進学と書いてきた。

 でも、それは陽介が選んだ進路ではない。ずっと、陽介のなかでその思いがくすぶっていた。藍に問われ、陽介は初めて、本当の願いをつぶやく。