「何?」

「着てなよ。天体観測で防寒は必須。そんな薄着じゃ風邪をひく」

「風邪なんてひかない」

「藍が平気でも、見ているこっちの方が寒々しいの」

 ぶっきらぼうな陽介の言葉に、藍が顔を向けた。長いつやつやとした黒髪が、藍が首をかしげるのに合わせて揺れる。


「ありがとう。陽介君」

 どちらかと言えば子供っぽい顔つきの藍だが、その仕草はやけに色っぽく陽介の目に写った。

「……陽介君?」

「あ、いや、えと、藍は、ここまでどうやって来てんの?」

 つい見惚れてしまった陽介は、照れ隠しに全く関係のない話を振った。


 下からのぼってくる道は一本しかなく、しかもこの場所から見えるため、明かりがあれば気づくはずだ。陽介が来た時から、霊園の駐車場には他に自転車も車もなかった。