「見てみる?」

 藍は何も言わなかったが、ゆらりと陽介の近くへと近づいてきた。陽介は望遠鏡をのぞいてピントをあわせると、「ほら」と藍にその場をゆずる。

 少しかがんでその中をのぞいた藍は、じ、とそれを見ていた。


「あれが、フォーマルハウト?」

「そう。見るの、初めて?」

 その問いには黙ったまま、藍はレンズを覗いている。

 見るともなしにその姿を見ていた陽介は、体の線もあらわな藍の薄いワンピース姿に思わず身震いした。


 ぽすっ。

 陽介は、自分の着ていた上着を脱ぐと、望遠鏡をのぞいている藍の肩にかけた。藍が、振り向く。