「せんせー」

「なんだ」

「かわいい生徒が困っているんだから、もうちょっと親身になって考えようかなとか思いません?」

 さらに冷たい視線が向けられた。そんな木暮に、陽介は聞いてみる。



「先生は、なんで養護教諭になろうと思ったんですか?」

「……なんだ、藪から棒に」

「木暮先生って、生徒の悩みを一緒になって親身に考えてくれるってタイプではないじゃないですか。それって、高校の養護教諭として向いてないんじゃないですか?」

「失礼なことをはっきり言うやつだな。それなら、私はどんな風に見える?」

「そうですねえ。どっちかって言うと病理か、もしくは研究者の方が向いているように見えます。一つの事についてえんえんと何か考えていたり作っていたり」

 それを聞いた木暮は、珍しいことに微かに笑んだ。



「見る目はあるな。特別にお前の相談を受けてやろう。何でも話すがいい」

 その木暮の顔を見ながら、陽介は続けた。

「養護教諭って、医学部で資格とるんですか?」

「必ずしも医学部とは限らないが、確かに私は医学部をでている」

 さらに何かを言いかけたが、木暮はそのまま口を閉じた。陽介は、木暮が何も言わないのを見てぼそりと言った。

「俺、将来医者になるんですよ」