とりあえず意思の疎通はできると判断した陽介は、望遠鏡を組み立て終えると、ぽんとそれをたたいた。

「こっからフォーマルハウトって星が見えるんだ。それを、見に来ている」

「フォーマルハウト……? ああ、南の、ひとつ星……」

 小さく呟いて、藍は彼の星の方を向いた。それを聞いて、陽介は片方の眉をあげる。

「藍って、星に詳しい?」

「別に」

 答えはそっけないが、ある程度星に関する知識がなければ、フォーマルハウトの名前すら聞いたことない人の方が多いだろう。


 藍の視線の先には、もう少しすればフォーマルハウトが見えてくるはずだ。

「あそこ、山と山の間に隙間があるだろ。あの隙間の間を、フォーマルハウトが通っていくんだ。新しく望遠鏡を買ったからさ、今見るなら、絶対フォーマルハウトだって……あ」

 説明しているうちに、その場所にはそれまでになかったやや黄色っぽい明るい星が現れる。