「ちょっ……藍!」

「何か用かね」

 追いかけようとした陽介を、木暮が室内から呼んだ。それを無視することもできず、後ろ髪を引かれる思いで陽介は室内に入った。



 藍は、陽介の呼びかけにも立ち止まらなかった。どのみち、たとえ藍を追いかけたとしても、あの調子ではまともに話もできなかっただろう。



「はい、明日の天体観測の件で先生とお話を」

「ああ、高木先生に言われた件だな」

「はい。あの、藍はどうしてここに……」

 一抹の不安が頭をよぎる。また、具合でも悪くなったのだろうか。



「たいしたことではない」

「また倒れたんですか?」

「そうではない」

 木暮の態度はそっけないが、ある意味それもいつも通りだ。

 藍も、あれだけ勢いよく飛び出していったのだから元気なのだろう、と陽介は今は藍の事を考えないようにする。

 そうして陽介は、木暮と簡単な打ち合わせを済ませた。