「なんなんだよ、あいつ」

 それを見ていた諒は低い声で聞いた。

「陽介、やっぱり、藍ちゃんと仲直りしたいんだ」

「そりゃ、もちろん」

「……このまま、藍ちゃんのことは忘れて……」

 小声になった諒の声は、陽介には届かない。陽介が振り向く。

「諒?」

「いや、なんでもない」

 そう言って、諒は笑った。

「今、一発殴っていいか?」

「なんでだよ!」



 ☆



 それから日程通りに行程を回ってホテルへと入り、初日は滞りなく終わった。

「あ、宇津木」

 それぞれの部屋に入ろうとしていると、陽介は担任の高木に声をかけられた。

「はい」

「明日の天体観測な、ちょいと俺の都合が悪くなった」

「え」

 流星群の観測の引率を、顧問の代わりに高木がしてくれることになっていたのだ。

「そうですか……」

(残念だけど、中止かあ)

「うん、だからな。代わりに引率を木暮先生に頼んでおいた」

「げ」

 木暮も養護教員として修学旅行に同行していた。