「あんな風に助けられて、ときめかない女子なんていないんじゃない? 折しも修学旅行の直前だし、これは、って期待しちゃった。でもさ」

「陽介、女の子の足をまじまじと見ないの!」

 二人の様子に気づいたらしい皐月が、隣から声をかけてきた。腰をまげて赤羽の足を確認していた陽介は、あわてて背を伸ばす。



「あ、ごめん!」

「ガードが堅いなー。宇津木君の幼なじみは」

 持ち上げたスカートをもとに戻すと、赤羽は苦笑しながら言った。

「いいよ、見せたのは私だし。皐月、うちの保健委員はホント頼りになるね」

 そう言って赤羽は友達とバスに乗っていった。



「裕子、まだ足痛いって?」

 皐月も、陽介がなんのために赤羽の足をのぞき込んでいたのかということをわかっていた。

「見た限り、腫れもないし普通に歩けるみたいだ。サポーターはしているって言ってたけど」

 そう言ってから、陽介は気づいたように言った。



「それを見てただけだぞ。変な気を起こしたわけじゃないからな」

「わかってるわよ。陽介がただのスケベおやじ予備軍だってことでしょ」

「皐月!」

 皐月と笑いながらバスに乗っていく陽介を、別のバスの中から、藍がじっと見ていた。



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