乗車が始まり、陽介がもやもやしながらバスに向かっていると、目の前の女子が人波に押されてふらつく。

「お、っと。大丈夫? あ、赤羽さん」

 陽介が荷物を支えて声をかけると、赤羽が振り向く。

「ありがと、宇都木君。ちょっとよろけちゃった」

「もしかして、足、まだ痛い?」

「ううん、ぶつかっただけ。足はもう全然痛くないよ。ほら」

 そう言って赤羽は、スカートをちょっと持ち上げてひねった方の足を見せる。



「宇津木君がすぐ手当てしてくれたから、回復が早かったんだって。あの時、宇津木君の言う通りすぐ保健室行ってよかったわ。一応サポーターしているけど、おかげで修学旅行も問題なく行ける」

「そりゃよかった」



 サポーターをしていると赤羽は言ったが、靴下をはいている足は、そうとは全然わからない。それくらいで済んでよかったと、陽介は赤羽の足元を見つめる。

 そんな陽介を見て、赤羽がふふ、と笑う。

「私を保健室に連れて行ってくれた時の宇津木君、かっこよかったよ。ちょっとときめいちゃった」

「は? なんで?」