その晩も陽介は昨日と同じ四阿にいた。

 望遠鏡を組み立てながら首をめぐらすと、果たしてその先には、白いワンピースを着た藍が立っている。


「……藍?」

 声をかけると、ゆらり、と緩慢な動きで陽介に向く。


 確かにその姿は、昼間に見た木ノ芽藍だ。だが、学校で見た藍とはイメージが全然違う。

 藍、と聞かれて否定しなかった。とすれば、別人のように見えてもやはりこれは藍なのか。

 陽介が困惑していると、目の前の小さな唇がゆっくりと開いた。



「何を見ているの?」

 昼間に聞いた元気いっぱいの声ではなく、感情のそぎ落とされた抑揚のない声だ。