さっきまでのぼうっとした表情ではない陽介を見て、諒が笑んだ。

「心ここにあらずは、それが原因か。はっきり本人に確認してみろよ」

「それができないんだよなあ」

「電話とかメールとか」

「あいつ、スマホとか連絡取れるもの、持ってないんだ」

「え、今どき?」

「なんか、家族が許してくれないんだって」

「厳しい家なのかな。なら、俺、さりげなく平野あたりに探り入れてこようか?」

 諒の言葉に、陽介は首を振った。


「いや、いいよ。俺が、直接話したいんだ」

「そっか。そうだな。人づてに聞いたことって、どこかでゆがむもんな。その状態だと難しいかもしれないけど、まずは藍ちゃんと話してみないと」

「うん」

 歩きながら話していて、陽介は少しだけ気が晴れた気がした。

「諒」

「ん?」

「ありがと。なんかすっきりした」