「ついこないだのことだよ。避けられるようになってから、もう一週間くらいになるかな」

 あの日から藍は、ぱたりと陽介の前に現れなくなった。夜の公園にも一度も来ていない。ついに風邪でもひいたのかと最初は心配していた陽介だったが、学校で顔を合わせた瞬間、藍は陽介に背を向けて逃げたのだ。


 あんな風に告白した後だけに、陽介の衝撃は大きかった。その後も何度か顔を合わせたが、そのたびに藍はあからさまに目をそらして逃げていく。

 諒はそれなら言ってくれてもとぶつぶつ何か小声で呟いてから、陽介に言った。


「で、避けているのが藍ちゃんの答え、だと」

「はっきり答えを聞いたわけじゃないんだ。まだ振られたわけじゃない。と、思う」

 あの時、確かに陽介の気持ちは藍に伝わったと思っている。けれど、藍の気持ちを、陽介は聞いていない。

(俺のことを好きじゃないなら、藍の口からちゃんとそう聞きたい)